副作用・有害事象
静脈炎・血管痛への対処法
静脈炎とは、静脈に炎症が起こった状態で、炎症の徴候である発赤、腫れ、痛み、纐纈などが静脈に沿って出現します。
抗がん薬には血管刺激性があり、静脈炎を起こすことがあります。また、血管刺激性の低い抗がん薬でも、点滴の針の刺激などで静脈炎が起こることがあります。
1)原因
薬の性質によるもの
- ①薬のpH(酸性・アルカリ性)
血液のpHは弱アルカリ性(pH7.4程度)です。
薬のpHが酸性側あるいはアルカリ性側にかなり傾いた場合、血管を刺激し、痛みや炎症を引き起こす原因となります。 - ②薬の浸透圧
浸透圧が異なる溶液に接触すると、血管内皮細胞が傷つきます。 - ③薬の刺激性
注射部位の血管内皮細胞に障害を与えると考えられます。
その他
点滴速度、血管の収縮、薬との接触時間の延長
- 《静脈炎・血管痛を起こす、代表的な抗がん薬》
- ・エピルビシン ・ゲムシタビン
- ・ダカルバジン ・ナベルビン
- ・エルプラット ・ドキソルビシン
- ・トレアキシン
* 他にも起こす可能性のある薬があります。
2)静脈炎・血管痛の症状
・ 点滴の針が入っている所の周辺やその腕の赤み、痛み、違和感、腫れ。
・ 点滴終了後の血管のつっぱり感・硬くなる・赤み・色が変わる(色素沈着)。
3)静脈炎・血管痛の対処方法
- ① 点滴の針の刺し方の工夫
- ・血流の良い太い静脈をできるだけ使用し、関節部位を避ける。
- ・毎回、できるだけ穿刺部位を変える。
- ・長く針を留置していた静脈、過去に静脈炎を起こした血管はさける。
- ② ホットパックの使用
- ・血管を温めることにより血管を広げ、薬の接触を減らし、静脈炎・血管痛の予防・緩和を図ります。
☆ホットパック
- アイスノンのようなジェル状のパックを温めて使用します。
- ③針の刺入部の確認、刺し替え
- ・血管外に薬が漏れていないかを確認します。
- ・薬剤が漏れているとき、それが疑われる時には針を刺し替えます。
4)抗がん薬が漏れたときの対応
- ・抗がん薬の種類によっては血管外に漏れると組織を傷め、皮膚潰瘍、筋の機能障害などが残ることがあります。
- ★ 血管の痛みや違和感がある場合は、すぐに看護師を呼んでください。
【薬剤別の対処例】
点滴終了後は、冷やすことで点滴後の血管炎を予防します。
- ・アイスノン・冷えピタ・お菓子の保冷剤などで3日間続けて冷やします。
- (冷やす位置は、点滴の針が入っていた部位を中心に約10 cm四方です)。
- ・点滴中に血管痛や静脈炎が起こったときは、症状が落ち着くまで入浴等、血管を温める行為は控えてください(シャワーは構いません)。
光や熱で分解された物質により血管痛が起こります。
- ・光を通さない袋をかぶせます。
- ・部屋のブラインドを下ろし、電気を消して、薬に光が当たるのを防ぎます。
- ・これらの処置後も痛み、腫れが続く場合は、病院に連絡して下さい。
- ・その他の薬剤でも、帰宅後に点滴を行なった血管が痛くなったり、針を刺した部位が赤く腫れているようでしたら、病院へご連絡ください。