今週の腫瘍内科
【NEW】今週の腫瘍内科(7/27-8/2)
更新日:2026/08/04
今週の腫瘍内科(2026年7月第5週/7月27日〜8月2日)
群馬大学医学部附属病院 腫瘍内科
腫瘍内科に関心のある医学生・研修医の方へ。当科の一週間の活動と、がん薬物療法をめぐる世の中の動き(論文・学会・制度)を、毎週まとめてお伝えします。今週は、遺伝子変異を目印に薬を選ぶ話と、新しい薬が使えるようになるまでの手続きを一緒に見ていきます。
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■ 今週の当科から
・医学生・研修医のための腫瘍内科説明会を開催しました
腫瘍内科の仕事や進路について、当科のスタッフと少人数で話せる会を開きました。学生・研修医の参加は30名〔実データ〕。当科で研修した先輩医師にも加わっていただき、教員から聞くのとは違う実感のある話が交わされました。会の中では、全国から医学生・研修医が集まる腫瘍内科セミナーへの参加報告もありました。
学びどころ:同じ関心をもつ人と出会える場です。学年や所属を問わず、まず話を聞いてみるところから始められます。
・原発不明がん・希少がんのカンファレンス(キャンサーボード)
診断や治療方針の決めにくいがんについて、多くの診療科・多職種が集まって方針を検討する定例の会議です。
学びどころ:「どの臓器のがんか特定しにくい」ケースにチームで向き合う、腫瘍内科ならではの横断的な診療に触れられます。
・がんゲノム医療/エキスパートパネルの下読み(プレEP)
がん遺伝子パネル検査の結果を本番の会議で議論する前に、他施設と合同でオンラインの下読みを行っています。
学びどころ:検査結果を治療推奨へ翻訳する議論を、準備段階から間近で見られます。
・がんゲノム検査の記録運用の整備
検査の説明や結果の返却を、保険診療の要件に沿って確実に記録できるよう、カルテ記載のテンプレートを事務部門・関係診療科と一緒に整えました。
学びどころ:新しい医療を院内に根づかせる仕組みづくりも、腫瘍内科医の仕事のひとつです。
・院内の医療安全に関する会議
各部署の担当者が集まり、安全な医療を提供するための取り組みを共有・確認する定例の会議に参加しました。
学びどころ:抗がん剤は効果と副作用が背中合わせです。安全管理の視点は、この領域では特に重みをもちます。
※ 個々の患者さん・症例に関する情報は含みません。当科の活動を一般化してご紹介しています。
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■ 今週の腫瘍内科ニュース
・ヒアニュオ錠10 mg(セバベルチニブ)、HER2遺伝子変異陽性の肺がんを対象に部会で審議〔部会審議(承認前)〕
2026年7月27日(月)に開かれた厚生労働省の薬事審議会 医薬品第二部会で、ヒアニュオ錠10 mg の製造販売承認の可否が審議されました(議題12)。対象として想定されているのは、HER2(ERBB2)遺伝子変異のある非小細胞肺がんです。部会は非公開で、議事要旨は作成時点では公表されていません。正式な製造販売承認、そのあとの保険適用(薬価収載)はこれからの手続きになります。
学びどころ:肺がんでは EGFR や ALK の変異・融合遺伝子を調べて薬を選ぶ流れが定着していますが、HER2 変異もその一つに加わろうとしています。裏付けとなった試験は下の「今週の一報」で紹介します。
出典:厚生労働省「薬事審議会 医薬品第二部会(令和8年7月27日開催)」開催案内 /同 議題(別紙・PDF)
・PIK3CA遺伝子変異のある卵巣明細胞がん治療薬について、適正使用のお願いが出されました
ハイツエキシン錠10 mg(リソバリシブメシル酸塩水和物)は、がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞がんを対象に、2026年3月23日に承認された薬です。製造販売元から医療関係者向けに適正使用の依頼文書が出され、日本臨床腫瘍学会のサイトにも2026年7月28日付で掲載されました。特に注意を要するのは高血糖で、国際共同第II相試験(CYH33-G201試験)での発現頻度は全Grade 89.2%、Grade 3以上 30.1%、初回発現までの期間の中央値は4.0日と報告されています〔文書記載値〕。初回導入は入院またはそれに準じた管理下で行うことが求められ、間質性肺疾患・皮膚障害についても、それぞれの領域に精通した医師との連携が呼びかけられています。
学びどころ:薬は承認されて終わりではありません。「誰に、どう使い、何を見張るか」を現場に届けるところまでが、新しい薬を安全に根づかせる仕事です。糖尿病や皮膚科の医師と組んで副作用に備える——腫瘍内科の連携の広さがよく表れています。
出典:日本臨床腫瘍学会「がん薬物療法ニュース」(2026年7月28日掲載)/大鵬薬品工業「ハイツエキシン錠10mg 適正使用のお願い」(PDF)
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■ 今週の一報(注目論文)〔肺がん/精密医療〕
HER2遺伝子変異のある進行非小細胞肺がんに対するセバベルチニブ ― SOHO-01試験
N Engl J Med. 2025;393(18):1819–1832./国際共同第I/II相・非盲検多施設試験(SOHO-01 Investigators)
・非小細胞肺がんのうち HER2 遺伝子変異をもつのは 2〜4% とされます。この試験では、局所進行または転移のある HER2 変異陽性の非小細胞肺がん 209例に、経口のHER2チロシンキナーゼ阻害薬セバベルチニブを投与しました。
・奏効率(腫瘍が一定以上縮小した割合)は、前治療のない集団(73例)で 71%(95%信頼区間 59–81)、化学療法などの前治療があり HER2 標的薬は未使用の集団(81例)で 64%(同 53–75)、HER2 抗体薬物複合体による前治療がある集団(55例)で 38%(同 25–52)でした〔論文報告値〕。
・奏効が続いた期間の中央値は前治療のない集団で 11.0か月、前治療のある集団で 9.2か月。無増悪生存期間の中央値は、前治療があり HER2 標的薬未使用の集団で 8.3か月(同 6.9–12.3)でした〔論文報告値〕。主な有害事象は下痢で、発現頻度は集団により 84〜91%、Grade 3 以上は 5〜23% と報告されています。
臨床的意義:飲み薬で、しかも遺伝子変異を目印に効果を狙える―という選択肢が肺がんでまた一つ増えつつあります。上のニュースで取り上げた部会審議は、この試験が土台になっています。制度(承認の手続き)と根拠(試験の数字)を並べて見ると、新しい治療がどう実装されていくのかがつかめると思います。
出典(PubMed 収載/PMID: 41104928):DOI: 10.1056/NEJMoa2511065 (Le X, et al. N Engl J Med 2025)
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■ 学会・セミナー/行事
8/21(金)つくばAIブースト国際シンポジウム ― 病理画像診断とがん研究におけるAI
病理画像とがん研究におけるAIをテーマに、国内外から3名の演者を招く国際シンポジウム。オンライン参加ができ、事前登録は不要です。
・演題:解釈可能な病理AI/病理画像を用いた腫瘍の3次元マッピング/AIとデジタルヘルスの最新動向
・演者:河村 大輔 先生(東京大学)/Donald Kramer 氏(ジョンズ・ホプキンス大学)/Kshitij Jadhav 先生(インド工科大学ボンベイ校)
・日時:2026年8月21日(金)9:30–12:00
・会場:筑波大学附属病院 B棟11階 紫峰ホール(Zoomウェビナーによるオンライン参加も可)
・主催:ToRA-SEED(関東次世代がん専門医療人養成拠点〈関東がんプロ〉・世界展開力強化事業と共催)/事前登録不要・参加方法は下記の開催案内ページに掲載
学びどころ:病理診断とAIが交わる場所で、いま何が研究されているのか。ゲノムに続くもう一つの「データでがんを読む」流れに触れられます。
開催案内:ToRA-SEED「【開催案内】つくばAIブースト国際シンポジウム」
9/9(水)令和8年度「医学生・研修医等をサポートするための会」
医学生・研修医等を対象に、将来のキャリア形成や地域医療への理解を深めることを目的に開かれる会です。
・対象:医学生・研修医等
・日時:2026年9月9日(水)13:30–14:50
・会場:群馬大学昭和キャンパス 医学科 臨床大講堂
・主催:群馬大学医学部附属病院 地域医療研究・教育センター(昭和地区事務部 総務課 地域医療支援係)
・申込:案内フライヤー記載の申込フォームより(問い合わせは地域医療支援係 kk-msomu10@ml.gunma-u.ac.jp)
学びどころ:群馬で働くという進路を、具体的な制度や支援の話とあわせて考えられる機会です。
当科の見学・実習・進路相談は随時受け付けています
外来やカンファレンスの見学、短期の実習など、希望に応じて日程を調整します。学年や所属は問いません。お問い合わせは腫瘍内科まで。
学びどころ:この記事で紹介しているカンファレンスやエキスパートパネルは、実際に見に来ていただけます。
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■ ひとことコラム ― 新しい薬が使えるようになるまで
今週のニュースで「部会で審議」「承認」「薬価収載」という言葉が並びました。日本では、新しい薬が患者さんに届くまでにいくつかの段階があります。まず製薬企業が臨床試験のデータをそろえて申請し、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)が審査します。その結果を踏まえて厚生労働省の審議会(部会)で審議され、了承されると厚生労働大臣が製造販売承認を出します。ただし、承認された時点ではまだ保険では使えません。そのあと中央社会保険医療協議会(中医協)での議論を経て薬価が決まり、薬価基準に収載されて、はじめて保険診療のなかで処方できるようになります。
臨床の場にいると、この手続きの一段ずつが「いつからあの患者さんに使えるのか」という具体的な問いに直結します。論文の数字を読む力と、制度の進み方を知っておくこと。腫瘍内科では、その両方が日々の判断を支えています。
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群馬大学医学部附属病院 腫瘍内科/2026-08-03 作成
※ 掲載内容・出典は作成時点の情報に基づきます。


