今週の腫瘍内科
今週の腫瘍内科(7/6–7/12)
更新日:2026/07/16
今週の腫瘍内科
2026年7月第2週(7/6–7/12)/ 群馬大学医学部附属病院 腫瘍内科
腫瘍内科を志す医学生・研修医のみなさんへ。当科の一週間の様子と、がん薬物療法をめぐる世の中の動きを、先輩医師の目線でまとめてお届けします。
今週は「遺伝子を調べて治療を選ぶ」精密医療の話題が続きます。肩の力を抜いて読んでみてください。
今週の当科から
■腫瘍センター・緩和ケアセンターの運営委員会
病院全体のがん診療体制や、緩和ケアの提供状況を、多職種で共有・検討する定例の委員会です。
学びどころ:腫瘍内科医が、個々の診療だけでなく病院全体のがん医療の仕組みづくりにも関わっていることが分かります。
■化学療法レジメンの審査(プロトコール審査委員会)
新しい抗がん剤治療の計画(レジメン)を、有効性・安全性の観点から使用開始前に審査する会議です。
学びどころ:抗がん剤治療を「安全に届ける」ための、標準化と管理の考え方に触れられます。
■がんゲノム医療/エキスパートパネル
がん遺伝子パネル検査の結果を、他施設とも合同で多職種・多診療科で読み解いています。
学びどころ:遺伝子の情報を治療選択につなげる精密医療の現場を、間近で見られます(今週の一報とも関わる話題です)。
■化学療法カンファレンス(消化管・肝胆膵)
外科や多職種と一緒に、一人ひとりの治療方針を持ち寄って相談する定例のカンファレンスです。
学びどころ:手術・薬物療法・支持療法を見渡して治療を組み立てる、その考え方の実際に触れられます。
■継続学習(Web講演会など)
胆道がんの薬物療法をはじめ、幅広い領域の最新知見を扱うオンライン講演会にも随時参加しています。
学びどころ:日々更新される知識を追い続ける、腫瘍内科の学びの文化が伝わればと思います。
※ 個々の患者さん・症例に関する情報は含みません。当科の活動を一般化してご紹介しています。
今週の腫瘍内科ニュース
■イボシデニブ(ティブソボ)、IDH1変異陽性の胆道がんに承認 薬事承認
出典 : 新薬情報オンライン(2026年6月19日承認品目)(段階・成分名の最終確認は一次情報〔PMDA・厚労省〕で)
出典:GemMed「がんゲノム医療拠点病院を全都道府県に整備…—がんゲノム拠点病院指定要件WG」(2026年7月7日)
今週の一報(注目論文):胆道がん
■IDH1変異陽性の胆道がんに対するイボシデニブ(ClarIDHy 試験)
Lancet Oncol. 2020;21(6):796–807.(第III相・二重盲検ランダム化比較試験)/ 最終全生存の解析:JAMA Oncol. 2021;7(11):1669–1677.
• 肝内胆管がんの約13%に IDH1 遺伝子変異がみられます。既治療の IDH1 変異陽性・進行胆道がんを対象に、IDH1 阻害薬イボシデニブをプラセボと比較しました(2:1 割付、計185例)。
• 主要評価項目の無増悪生存期間(中央値)は 2.7か月 対 1.4か月(ハザード比 0.37、95%CI 0.25–0.54、片側 P<0.0001)と、イボシデニブ群で有意に良好でした〔論文報告値〕。
• 全生存期間の中央値は 10.3か月 対 7.5か月。病勢進行後にプラセボ群から実薬へ移った例(43例)を補正すると、プラセボの生存期間中央値は 5.1か月、ハザード比 0.49(95%CI 0.34–0.70、片側 P<0.001)でした〔論文報告値〕。
臨床的意義:遺伝子変異を狙い撃つ「標的治療」を、希少がんである胆道がんにも届けた一本です。パネル検査 → 変異の同定 → 治療、というゲノム医療の流れが、そのまま臨床に効いてくることが分かります。
出典(PubMed 収載):DOI: 10.1016/S1470-2045(20)30157-1(Abou-Alfa GK, et al. Lancet Oncol 2020)/ DOI: 10.1001/jamaoncol.2021.3836(Zhu AX, et al. JAMA Oncol 2021)
学会・セミナー/行事
■7/13(月)Colorectal Cancer Genomic Seminar in Gunma
大腸がん診療における遺伝子パネル検査をテーマにした学術セミナー。当科の高張大亮教授が座長を務めます。
演題:大腸がん診療における遺伝子パネル検査の使い方
演者:砂川 優 先生(聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座 主任教授)
座長:高張 大亮 教授(群馬大学 腫瘍内科学分野)
日時:2026年7月13日(月)19:00–20:00
会場:現地+オンライン(ハイブリッド)
主催:中外製薬(Web講演会) ※医療関係者向け・要事前登録
学びどころ:今号で取り上げた「遺伝子異常に基づく治療」の考え方を、第一線の演者から学べる機会です。
■7/21(火)交流会 ― 海外で創薬に携わるOB・橋本堅治先生を囲んで
当科の非常勤講師で、がん薬物療法専門医として国内外で経験を積み、現在は海外の創薬企業でがん免疫療法などの新薬開発をリードされている橋本先生を招いての交流会。がん診療・研究・留学・海外キャリアについて、自由に歓談できる場です。
内容:がん診療・研究・海外キャリアをテーマにした交流会(途中参加・退出自由)
ゲスト:橋本 堅治 先生(群馬大学 腫瘍内科 非常勤講師/創薬企業 Egle Therapeutics 最高医学責任者〈CMO〉。がん免疫療法の新薬開発に従事)
日時:2026年7月21日(火)16:30–18:00
会場:群馬大学医学部附属病院 腫瘍センター(南病棟2階)
主催:群馬大学 腫瘍内科(高張 大亮 教授) ※お問い合わせは腫瘍内科まで
学びどころ:臨床から新薬開発(創薬)へと広がるキャリアの実際を、海外で活躍する先輩から直接聞ける機会です。腫瘍内科に関心のある学生・研修医の参加を歓迎します。
ひとことコラム ― 「遺伝子パネル検査」って何をしているの?
がん遺伝子パネル検査は、がんの組織や血液を使って、100以上の遺伝子の変化を一度にまとめて調べる検査です。見つかった変化に対して効く薬があれば、その治療につなげられます。今回の胆道がんと IDH1 の話のように、「どの遺伝子が変化しているか」で治療を選ぶ―これが精密医療(プレシジョン・メディシン)の考え方です。腫瘍内科は、検査の結果を多職種で読み解く「エキスパートパネル」の場で議論し、一人ひとりに合った治療を組み立てる、その中心にいます。臓器の枠を越えて、遺伝子の視点からがんと向き合えるのは、この領域ならではの面白さだと思います。
群馬大学医学部附属病院 腫瘍内科/2026年7月12日 作成
※ 掲載内容・出典は作成時点の情報に基づきます。


