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今週の腫瘍内科

今週の腫瘍内科

【NEW】今週の腫瘍内科(7/13–7/19)

更新日:2026/07/21

今週の腫瘍内科

2026年7月第3週:7/13–7/19 / 群馬大学医学部附属病院 腫瘍内科

 

腫瘍内科を志す医学生・研修医のみなさんへ。当科の一週間の様子と、がん薬物療法をめぐる世の中の動きを、先輩医師の目線でまとめてお届けします。

今週は「血液を調べて治療を切り替える(リキッドバイオプシー)」と、専門医制度をめぐる話題を中心に見ていきましょう。肩の力を抜いて読んでみてください。


■今週の当科から

※個々の患者さん・症例に関する情報は含みません。当科の活動を一般化してご紹介しています。

 

外来がん薬物療法の運営委員会
外来で行う抗がん剤治療の運営状況や、免疫療法の実施状況、取扱いマニュアル・レジメン申請の見直しなどを、多職種で確認する定例の委員会です。
学びどころ:抗がん剤治療を「安全に、滞りなく外来で続ける」ための仕組みづくりに、腫瘍内科医が深く関わっていることが分かります。

• がんゲノム医療/エキスパートパネル(下読みを含む)
がん遺伝子パネル検査の結果を、他施設とも合同で多職種・多診療科で読み解いています。本番の会議の前には「下読み(プレEP)」で症例をあらかじめ検討します。
学びどころ:遺伝子の情報を治療選択につなげる精密医療の議論を、準備段階から間近で見られます。

• 血液がん(造血器腫瘍)のゲノム検査の運用整備
血液がんを対象とした遺伝子パネル検査を院内で安全に届けるため、依頼から結果返却までの手順を多職種で確認しています。
学びどころ:固形がんだけでなく血液がんにもゲノム医療が広がりつつあり、その体制づくりの現場に触れられます。

• 原発不明がん・希少がんのカンファレンス(キャンサーボード)
診断や治療方針の難しいがんについて、多くの診療科・多職種が集まって方針を検討する会議です。
学びどころ:「どの臓器のがんか特定しにくい」ケースにチームで向き合う、腫瘍内科ならではの横断的な診療に触れられます。

• がん薬物療法専門医制度の説明会に参加
がん薬物療法の専門医制度の改訂に関する学会の説明会に参加しました。専門医を育て、質を保つ仕組みも日々更新されています。
学びどころ:腫瘍内科医がどのように専門性を身につけ、認定されていくのか―キャリアの道筋に触れられます(下のニュースでも取り上げます)。


■ 今週の腫瘍内科ニュース

• カミゼストラント(エトカマ)、ESR1遺伝子変異のある乳がんに承認【薬事承認】
対象:ESR1遺伝子変異を持つ、ホルモン受容体(ER)陽性・HER2陰性の乳がん。次世代の経口SERD(選択的エストロゲン受容体分解薬)で、2026年6月19日に承認されました。※現時点では薬事承認の段階で、保険適用(薬価収載)はこの後の手続きになります。
学びどころ:ホルモン療法が効きにくくなる原因のひとつESR1変異を、血液(ctDNA)で捉えて薬を切り替える―精密医療が乳がんのホルモン治療にも入ってきた一報です。裏付けとなったSERENA-6試験は、下の「今週の一報」で紹介します。

出典:新薬情報オンライン(エトカマ〈カミゼストラント〉2026年6月19日承認)(段階・成分名の最終確認は一次情報〔PMDA・厚労省〕で)

• がん薬物療法専門医制度が改訂へ(機構認定への移行)
日本臨床腫瘍学会が、がん薬物療法専門医制度の改訂に関する説明会を開催しました(2026年7月16日)。専門医の認定は、学会による認定から日本専門医機構による認定へと移行が進められています。
学びどころ:腫瘍内科を志す人にとっては、「専門医をどう取るか」という制度そのものが、いままさに整えられている時期にあたります。
出典:日本臨床腫瘍学会(専門医制度に関する説明会・2026年7月16日開催)


■ 今週の一報(注目論文)/乳がん・精密医療

血液(ctDNA)でESR1変異を捉えてカミゼストラントに切り替える(SERENA-6試験)
N Engl J Med. 2025;393(6):569–580.(第III相・国際多施設・二重盲検ランダム化比較試験/NCT04964934)

・ ER陽性・HER2陰性の進行乳がんで、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬による一次治療を受けている患者を、2〜3か月ごとに血液中のctDNAでESR1変異が出ていないか監視しました(計3,256例をスクリーニング)。
・ ESR1変異が新たに現れ、かつ画像上はまだ進行していない315例を1:1で割り付け、CDK4/6阻害薬は続けたまま、アロマターゼ阻害薬をカミゼストラントに切り替える群と、そのまま継続する群を比較しました。
・ 主要評価項目の無増悪生存期間(中央値)は、切替群16.0か月 対 継続群9.2か月(ハザード比0.44、95%CI 0.31–0.60、P<0.0001)。QOLが悪化するまでの期間も21.0か月 対 6.4か月と延長し、有害事象による中止は1.3% 対 1.9%でした〔論文報告値〕。日本の施設も参加した試験です。

臨床的意義:画像で「進行」と分かる前に、血液の遺伝子情報(ctDNA)で耐性のきざしを先取りして薬を変える―という新しい治療の進め方を示した一本です。上のニュースにある承認は、この試験が裏付けになっています。採血だけでがんの変化を追う「リキッドバイオプシー」の実力が伝わってきます。
出典(PubMed収載):DOI: 10.1056/NEJMoa2502929(Bidard FC, et al. N Engl J Med 2025)


■ 学会・セミナー/行事

8/8(土)第3回 医療人のための統計セミナー ― 「多重比較」
臨床研究で使う統計の考え方を、基礎から学ぶセミナー。今回のテーマは「多重比較」。セミナー後には統計の個別相談の時間も設けられています。
テーマ:多重比較
講師:藤田 晴康 先生(群馬大学医学部 公衆衛生学 客員教授)
日時:2026年8月8日(土)14:30〜
会場:群馬大学(Web配信あり・任意参加)
主催:群馬大学医学部附属病院 地域医療研究・教育センター事務局
申込:2026年7月24日(金)まで(統計個別相談あり)
学びどころ:論文を読み・書くうえで欠かせない統計リテラシーを、基礎から学べる機会です。


■ ひとことコラム ― 「リキッドバイオプシー」って何をしているの?

リキッドバイオプシー(液体生検)は、がんの組織を針で採る代わりに、血液を採ってその中に流れ出たがん由来のDNA(ctDNA)を調べる検査です。体への負担が少なく、くり返し行えるのが強みで、治療の効き具合や、耐性につながる遺伝子変化(今回の話ではESR1変異)をいち早く捉えられます。今週の一報のように、画像で「進行」と分かる前に、血液の情報をもとに薬を切り替える―そんな一歩先回りの治療が現実になりつつあります。腫瘍内科は、こうした検査の結果を読み解き、一人ひとりの治療をどう組み替えるかを判断する役割を担います。採血一本からがんの「今」を追いかけられるのは、この領域の面白さのひとつだと思います。


群馬大学医学部附属病院 腫瘍内科/2026年7月18日 作成
※掲載内容・出典は作成時点の情報に基づきます。

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