今週の腫瘍内科
今週の腫瘍内科(6/29-7/5)
更新日:2026/07/15
今週の腫瘍内科
2026年7月第1週(6/29–7/5)/ 群馬大学医学部附属病院 腫瘍内科
腫瘍内科を志す医学生・研修医のみなさんへ。当科の一週間の様子と、がん薬物療法をめぐる世の中の動きを、先輩医師の目線でまとめてお届けします。肩の力を抜いて読んでみてください。
今週の当科から
■化学療法カンファレンス(消化管・肝胆膵)
外科や多職種と一緒に、一人ひとりの治療方針を持ち寄って相談する定例のカンファレンスです。
学びどころ:手術・薬物療法・支持療法を見渡して治療を組み立てる、その考え方の実際に触れられます。
■がんゲノム医療/エキスパートパネル
がん遺伝子パネル検査の結果を、他施設とも合同で多職種・多診療科で読み解いています。
学びどころ:遺伝子の情報を治療選択につなげる「精密医療」の現場を、間近で見られます。
■造血器領域へのゲノム医療の広がり
固形がんに続き、血液のがんに対するパネル検査の運用づくりを進めています。
学びどころ:新しい医療を院内に根づかせる、制度・体制づくりという腫瘍内科医のもう一つの仕事も知れます。
■継続学習(Web セミナーなど)
多発性骨髄腫や急性骨髄性白血病など、幅広い領域の最新知見を扱うオンラインセミナーにも随時参加しています。
学びどころ:日々更新される知識を追い続ける、腫瘍内科の学びの文化が伝わればと思います。
■後期研修に向けた情報提供
内科診療センターの合同説明会などで、腫瘍内科でのキャリアについて紹介しています。
学びどころ:専門医取得までの道のりや、内科の中での腫瘍内科の位置づけを具体的にイメージできます。
※ 個々の患者さん・症例に関する情報は含みません。当科の活動を一般化してご紹介しています。
今週の腫瘍内科ニュース
■デュルバルマブ(イミフィンジ)、切除可能な胃・食道胃接合部がんの周術期治療で承認 薬事承認
対象:切除可能な胃・食道胃接合部(GEJ)腺がんの周術期治療(術前・術後の化学療法 FLOT に免疫チェックポイント阻害薬を上乗せ)。効能・効果の追加(適応拡大)として、2026年6月19日に承認されました。※現時点では薬事承認の段階で、保険適用(薬価収載)はこの後の手続きになります。
学びどころ:これまで進行・再発期が中心だった免疫療法が、「治癒を目指す周術期」にも広がってきた、という節目の一報です。裏付けとなった試験は下の「今週の一報」で紹介します。
出典:CareNet「デュルバルマブ、切除可能胃がんの周術期治療で承認/AZ」(承認は MATTERHORN 試験に基づく)
■がんゲノム医療の提供体制、2026年度に向けて見直しの議論
厚生労働省のワーキンググループでは、拠点病院の指定要件の改定に加え、がん遺伝子パネル検査を全てのがん診療連携拠点病院で実施できるようにしてアクセスを高める方向が議論されています。パネル検査の実績は2025年末で12万件超、2026年6月1日時点で中核拠点13・拠点32・連携256施設(うちエキスパートパネル実施41施設)が整備されています〔公開資料の集計値〕。
出典:GemMed(全都道府県への整備)/厚生労働省(指定に関する検討会)
■ASCO 2026(消化器がん領域)の話題から
胃・食道がんでは HER2 標的の二重特異性抗体(HORIZON 試験)や新規の抗体薬物複合体、大腸がんでは BRAF V600E 変異に対する BREAKWATER 試験の追加解析などが報告されています。周術期・ゲノム・新規モダリティが並ぶ、いまの消化器がん治療の縮図のような顔ぶれです。
出典:Targeted Oncology「ASCO 2026 GI Cancer Highlights」
今週の一報(注目論文):胃がん
■切除可能な胃・食道胃接合部がんに対する周術期デュルバルマブ(MATTERHORN 試験)
N Engl J Med. 2025;393(3):217–230.(第III相・二重盲検ランダム化比較試験)
• 標準治療である周術期 FLOT 化学療法に、デュルバルマブ(抗PD-L1抗体)を上乗せする意義を、プラセボと比較して検証した試験です(各群474例)。
• 2年無イベント生存率は 67.4% 対 58.5%(イベント/死亡のハザード比 0.71、95%CI 0.58–0.86、P<0.001)、病理学的完全奏効は 19.2% 対 7.2% と、上乗せ群で良好でした〔論文報告値〕。
• 日本を含む多国籍試験で、国内複数施設も参加しています。上の「今週のニュース」で紹介した今回の承認は、この試験が根拠になっています。
臨床的意義:免疫療法を「治癒を目指す周術期」に組み込む流れを示した一本です。制度(承認)と根拠(試験)をセットで見ると、新しい治療がどう実装されていくかがよく分かります。
出典(PubMed 収載):DOI: 10.1056/NEJMoa2503701(Janjigian YY, et al. NEJM 2025)
学会・セミナー/行事
■7/13(月)Colorectal Cancer Genomic Seminar in Gunma
大腸がん診療における遺伝子パネル検査をテーマにした学術セミナー。当科の高張大亮教授が座長を務めます。
演題:大腸がん診療における遺伝子パネル検査の使い方
演者:砂川 優 先生(聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座 主任教授)
座長:高張 大亮 教授(群馬大学 腫瘍内科学分野)
日時:2026年7月13日(月)19:00–20:00
会場:群馬ロイヤルホテル 9階ローズルーム(現地+オンラインのハイブリッド)
主催:中外製薬(PLUS CHUGAI Web講演会)※医療関係者向け・要事前登録
学びどころ:この号で取り上げた「遺伝子異常に基づく治療」の考え方を、第一線の演者から学べる機会です。
ひとことコラム ― 腫瘍内科ってどんな科?
腫瘍内科は、がんに対する薬物療法(抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬など)を専門とする内科です。臓器を問わず幅広いがんを診るのが特徴で、近年はがんゲノム医療、緩和ケア、多職種連携が仕事の大きな柱になっています。今回の胃がんの話のように、新しい治療が「どんな根拠で、どの患者さんに」使えるようになるのかを見極めるのも、私たちの大切な役割です。全身を、内科の視点でがんと向き合いたい方に向いた領域だと思います。
群馬大学医学部附属病院 腫瘍内科/2026年7月2日 作成
※ 掲載内容・出典は作成時点の情報に基づきます。


